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網膜動脈閉塞症

目次

  1. 網膜動脈閉塞症

網膜動脈閉塞症とは、網膜に血液を送っている動脈が閉塞してしまう疾患です。網膜静脈閉塞症と名前が似ていますが、心臓から送り出された新しい血液が流れる動脈が閉塞してしまうのと、全身に行き渡って役目を終え、心臓に戻ってくる静脈が閉塞してしまうのでは、その症状の緊急度が大きく異なります。

網膜静脈閉塞症の場合、血流障害によりすぐに網膜細胞が壊死してしまうことはないのですが、網膜動脈閉塞症の場合は網膜細胞がすぐに壊死してしまう危険があり、可能な限り対応を急ぐ必要があります。網膜動脈閉塞症は、目に心筋梗塞や脳梗塞と同じような状態が起きてしまった状態です。数多くある眼科疾患の中で、緊急性の高い疾患の1つです。

網膜動脈閉塞症は血管がどの部分で閉塞を起こすかによって症状が異なります。恐ろしいのは、発症するまで自覚症状がほとんどなく、突然症状が出現するということです。

動脈が枝分かれする前の根元部分で閉塞を起こしてしまう網膜中心動脈閉塞症では、網膜全体の血流障害となり、突然の視力低下や、視界が真っ暗になる(視野欠損)といった症状が現れます。それに対して、動脈が枝分かれした後の動脈が部分的に閉塞する網膜動脈分枝閉塞症では、閉塞した動脈が循環している範囲のみの血流障害となるため、全体が真っ暗になるというよりは、部分的な視野欠損による見えにくさを自覚される場合が多いです。

網膜動脈閉塞症の原因として最も多いのが血栓(血液の固まり)や塞栓(血栓が血液で運ばれ血管を詰まらせる状態)です。頸動脈の動脈硬化が原因となって形成された血栓や、不整脈で血液が心臓に滞留したことで生じた血栓が、血流にのって運ばれることで動脈閉塞を引き起こします。塞栓が目の細い血管に詰まってしまえば網膜動脈閉塞症に、脳の細い血管に詰まれば脳梗塞に陥る危険な状態です。また、網膜動脈に炎症や攣縮(ふるえ)が起きたりすることがきっかけとなることもあります。

網膜動脈閉塞症は健康の方にも起きてしまう事がありますが、動脈硬化の原因となる、肥満、高血圧、高脂血症、糖尿病がある方、不整脈がある方、またはそのいずれも持病としてお持ちの方はリスクが高く注意が必要です。血管収縮作用のある喫煙(ニコチン)も発症に関わる可能性があり、生活習慣の見直しも予防の観点から大切と言われています。

目の症状をきっかけにこれら全身の疾患が見つかる場合もあります。目の症状から血栓の存在が疑われた場合には、採血検査や頸動脈エコーなど、内科医との連携をしっかりと行い治療を進めていくことが大切です。

網膜細胞が動脈閉塞による虚血状態に耐えられるのは、数時間(60分程度ともいわれています)が限界です。この時間内に閉塞を解除し、血流を再開することができなければ、低下した視力や失われた視野を取り戻すことはできなくなります。そのため、網膜動脈閉塞症は数少ない眼科救急疾患の1つです。

血流を再開する方法には、眼球マッサージ、心筋梗塞発作時に使用されるニトログリセリン、血栓溶解薬、網膜循環改善薬などを使います。また、視神経への負担を少しでも軽減する目的で、眼圧を下げるための手術(目の中の水を抜く)や点眼、内服薬を使用することもあります。行える施設は限られてしまいますが、虚血による低酸素状態を改善するための高圧酸素療法も効果的といわれています。

症状がどこまで改善してくれるかは、発症時の血管閉塞の程度と、発症から治療開始までの時間により様々です。網膜動脈閉塞症の場合には、自覚される症状が強く、比較的早めに眼科へ受診していただけることが多いのですが、網膜動脈分枝閉塞症の場合には、なんとなく見えにくいということを感じながらも放置されてしまうことが多く、眼科を受診された際には治療することができないという残念な状況も珍しくありません。

網膜動脈閉塞症を発症するほとんどの方は突如として症状が現れます。そのため、仕事などがあってなかなか眼科を受診できなかったという言葉をよく耳にします。こういう病気があると知っておくだけで、もしもの時に自分の目を守る行動を取れるようになるかもしれません。目は仕事をする上でも非常に大切であり、緊急性が高い症状が現れた際には、優先順位を考えて行動していただければ幸いです。

網膜動脈閉塞症を発症する方の中には、網膜の瞬間的な虚血により、ほんの数秒だけ目の前を暗く感じる一過性黒内障(軽度の頭痛や目の奥の痛みを感じることもあります)を自覚される方もいらっしゃいます。これは血管の完全閉塞ではなく、瞬間的な虚血となった後、自覚症状改善とともに血流が再開したことを意味します。この時点で、生活習慣病や不整脈などの管理をもっと気をつけておけば・・・といった後悔がでないように心がけたいものです。気になる症状がある場合には、お気軽に早めにご相談ください。

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