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結膜炎

目次

  1. 結膜炎
  2. 細菌性結膜炎
  3. ウイルス性結膜炎
  4. アレルギー性結膜炎

結膜炎という言葉を皆さんも一度は耳にしたことがあるかと思います。目の充血やメヤニで眼科を受診した際、医師から「結膜炎ですね」と言われていつも同じような点眼薬を処方された経験がある方も多いはずです。実際ほとんどの結膜炎(後述しますが、ここでは細菌性結膜炎を指します)は、自然経過や処方された見覚えのある点眼薬で改善してしまうことが多いのですが、稀に重症化するケースもあり、結膜炎を軽視しすぎるのは危険です。

結膜炎とひと言でいってもその病態は1つではありません。結膜炎は原因によって、感染性結膜炎(細菌性結膜炎・ウイルス性結膜炎)やアレルギー性結膜炎に分類されるだけでなく、中には性感染症(STD)と呼ばれるクラミジアや淋菌、真菌なども絡んでいる場合があるのです。

新型コロナウイルス(COVID-19)が結膜炎を起こす可能性があることも示唆されています。現時点では結膜炎の所見のみで、コロナ感染を診断することは困難であり、コロナを疑う他の症状(発熱、咳、倦怠感など)を伴う場合には、まずは保健所でチェックを受けていただくことが望まれます。

このように、結膜炎の原因は様々です。原因によって症状が異なるだけでなく、必要な薬や治療に必要な期間、注意するべき内容が変わってきます。自分がどの結膜炎であるのかを正しく理解することが大切です。

細菌性結膜炎は細菌の感染によっておこる結膜炎です。原因となる細菌には、ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌、レンサ球菌、淋菌、緑膿菌など様々なものがあります。充血や膿性のねばねばしたメヤニが特徴的です。

治療は細菌に対する抗生剤点眼や、炎症を抑えるステロイド点眼です。原因となっている菌を推定し、適した抗生剤を用いるのが理想的ですが、一般的には多くの種類に有効な抗生剤点眼薬を第1選択とすることが多く、いつも同じような点眼薬を処方されるのはこのためです。

多くの細菌性結膜炎は、広範囲な細菌に効果を持つ点眼薬の使用により1-3日程度で改善を認め心配ありません。ただし、広範囲の抗菌薬点眼をダラダラと長期的に意味もなく使用することは、耐性菌といった強力な菌が生まれるリスクにもなります。しっかりと眼科を受診し、適切な使用期間で点眼薬の使用を終えることも大切です。

広範囲抗菌薬点眼薬を使用しても効果が十分に得られない場合は、特殊な細菌や性感染症(STD)、ウイルスや真菌といった他の原因が絡んでいる可能性もあります。これらの中には黒目(角膜)に穴をあけてしまう(角膜穿孔)といった深刻状態を引き起こすものもあり、培養検査などを行うことで原因をしっかりと特定し、原因に有効な薬剤を素早く選択して治療を開始する必要があります。

ウイルスは細菌よりも小さい目に見えない微生物です。自分で生きることはできず、ヒトや動物の細胞内に侵入して、その細胞を自分の住みやすいように変えることで住み着いています。この際、ウイルスに対する抵抗力が劣ってしまうと病気になってしまうのです。

眼科で扱う疾患で最も頻度が高いのがアデノウイルスです。アデノウイルスによる結膜炎は、はやり目や流行性角結膜炎と呼ばれ、涙を介しての感染力が非常に強く、自身の反対目や他人への感染予防を徹底する必要がある病気です。プール熱と呼ばれる咽頭結膜熱(流行性角結膜炎とアデノウイルスの種類が異なります)や、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスが関連した急性出血性結膜炎も同じはやり目として分類されています。

その他、単純ヘルペスウイルスや、帯状ヘルペスウイルスなどによるウイルス性結膜炎もあります。これらは同じウイルス性結膜炎ではありますが、他人にうつることは稀であり、流行することはありません。

はやり目は、強い充血、大量のメヤニ、涙の増加(流涙)、ゴロゴロとした異物感、瞼の急激な腫れ、リンパ節(耳前腺)の腫れ、白目がブヨブヨする(結膜浮腫)など、たくさんの辛い症状をもたらします。

ところが、残念なことに原因であるアデノウイルスに対する特効薬は存在しません。そのため、自身の免疫力でウイルスを退治するしかなく、治療に最低でも2週間程度は時間を要するといわれています。ウイルスに対する抵抗力をつけるため、休養を十分に取って体力をつけることも必要です。ただ、特効薬がないからといって、点眼薬を使わなくて良いわけではありません。はやり目の治療で1番大切なことは、いかに周囲に感染させないか(感染予防)、そして合併症を残さないかということです。


はやり目の合併症は大きく2つ知られています。1つは黒目(角膜)の表面に小さな点状の濁りができてしまう状態です。多発性角膜上皮下混濁(MSI:Multiple subepithelial corneal infiltrates)と呼ばれ、視力低下や光の乱反射による眩しさ(羞明感)の原因となります。混濁は長い間放置してしまうと残存してしまうこともあり、しっかりと予防や治療を行う必要があります。

はやり目のもう1つの合併症として、瞼の裏に偽膜と呼ばれる炎症性の膜を形成することがあります。偽膜を生じてしまうと点眼薬が効きにくくなり、症状が改善しにくくなるだけでなく、瞼が赤く腫れてしまったり、偽膜が黒目(角膜)を傷つけることで目を開けられないような痛みがでる原因にもなります。

特に子供は偽膜ができやすく注意が必要です。診察の際に泣いてしまうこともありますが、しっかりと瞼の裏側の所見を確認し、必要に応じて偽膜を除去する必要があります。泣いてしまうからと言って、すぐに診察を止める優しい医者が名医とは限りません。

はやり眼はウイルスが原因で特効薬はありません。とはいえ、合併症の予防や治療には点眼薬が有効です。こういったことを知らなければ、点眼薬を使ったのに充血やメヤニが全く治らないといった不安や、眼科を受診したタイミングによっては、点眼薬を使用したら症状が悪化した(はやり目は症状のピークが3-5日後といわれています)といった誤解が生まれる原因になってしまうのです。

こういった不安や誤解が生じると、点眼薬を自己判断で止めてしまう方がいらっしゃいます。はやり眼は時間が経過することで、ある程度は免疫力によって改善していくことが予想されますが、充血やメヤニが自然に治ったとしても、合併症が原因となり、見えにくさや眩しさなどを訴え、時間が経ってしまってから再び眼科を受診される方も少なくありません。しっかりと医師に診察を受け、適切な治療をしっかり続けることが大切です。

アレルギー性結膜炎は、目に起こる様々なアレルギー疾患の総称です。日本ではおよそ30%の方が罹患しているといわれています。原因となるアレルゲン(アレルギーの原因となる抗原)には、季節に関係しているもの(季節性)と、季節による強弱はあるものの1年を通じて影響するもの(通年性)とに分類されます。季節性アレルギー性結膜炎には、スギやヒノキなど花粉症に関係するものが多く、通年性アレルギー性結膜炎には、ダニやハウスダストが原因となることが多いです。

アレルギー性結膜炎の大半は、花粉が原因の季節性アレルギー性結膜炎です。アレルギーの原因となる植物は約60種類もあるといわれていますが、中でも春先に飛ぶスギ花粉によるアレルギーは毎年多くの方々を苦しめています。

花粉やその他のアレルゲンが目の粘膜に接触することで、目の痒みや充血、目の腫れ、ゴロゴロとした異物感、涙やメヤニといった症状がでます。中には瞼の裏側にブツブツとしたできものができてしまうことで痛みを生じたり、コンタクトレンズを使用している場合には、コンタクトレンズがまばたきの度に上にずれてしまったりといった症状がでる方もおり、QOLの低下に繋がるのです。

花粉などアレルゲンが出て結膜に侵入すると、肥満細胞からヒスタミンなどのメディエーター(アレルギー症状を引き起こす物質)が放出されると考えられています。

このヒスタミンが、結膜の表面に存在する神経を刺激することで痒みを引き起こし、血管に作用することで充血や目の腫れを引き起こします。いわゆるアレルギー体質と呼ばれる方々は、このヒスタミンに対する感度が敏感だと考えられており、ヒスタミンやその他のメディエーターをコントロールすることが、アレルギー症状を抑える結果に繋がるのです。

アレルギー性結膜炎の治療は、アレルギーそのものを無くすことは難しく、症状の予防や軽減を目的とする対症療法が中心です。また、大前提としてアレルゲンへの曝露を極力避けることが望ましく、花粉症であればマスクやメガネをするなど、花粉とできるだけ接しないようにする心がけが必要です。そのため、自分が何に対するアレルギーであるのか、採血検査、皮内検査、スクラッチテストといった検査(皮膚科などで行っていただきます)で知っておくことも予防に繋がります。

当院では、注射器を使わずに指先から少量の採血を行い、20分ほどでアレルゲンを確認できる簡易検査が可能です。無意識に吸い込みやすい代表的なアレルゲン8項目(イヌ、ネコ、ダニ、ゴキブリ、スギ、ブタクサ、ヨモギ、カモガヤ)を知ることができます。あくまで簡易検査にはなりますが、子供にも行いやすく、日常生活におけるちょっとした意識付けにはオススメです。

20分で結果がわかるアレルギー検査

アレルギーに対する点眼薬は、その作用機序によって大きく2つに分類されます。かゆみを引き起こすヒスタミンの作用を直接阻止するH1受容体拮抗薬と、ヒスタミンなどのメディエーターを増やさないようにするメディエーター遊離抑制薬と呼ばれる点眼です。これらを使い分けることでアレルギー症状を抑えていきます。中には両方の作用を持つ点眼薬もあり、自分にあった薬の組み合わせを見つけていくことが大切です。

なかなか症状が治まらない場合には、ステロイド点眼薬を併用することもあります。ステロイド点眼薬は非常に効果的で喜ばれることの多い薬ですが、長期的に使用してしまうと眼圧上昇などの副作用が出てしまうこともあり注意が必要です。ステロイド点眼薬を使う頻度が多い重症なアレルギーの場合、副作用が出ていないかを定期的な受診で確認することが大切です。

抗アレルギー点眼薬であるH1受容体拮抗薬には即効性がありますが、メディエーター遊離抑制薬と呼ばれる点眼薬は最大限の効果を発揮するまでに約2週間程かかるといわれています。そのため、メディエーター遊離抑制の効果を持つ点眼薬の場合、痒みがある時だけ点眼薬を使用するのではなく、痒くない時にも点眼を続けておくことでアレルギー症状の予防に繋がると考えられています。特に花粉症の場合には、花粉が飛散する2週間ほど前から点眼薬を始めておくことで、症状がでる期間を短くし、症状を軽くすることができるといわれています。同じ点眼薬を使った場合でも、使い方によって効果を十分に期待できるかどうかが変わってくるのです。

アレルギー性結膜炎の中には特殊な病態も存在します。アトピー性皮膚炎に伴うアトピー性角結膜炎や、幼少期の男児に多い春季カタルと呼ばれる病態です。春季カタルは、ハウスダストやダニなどが原因となることが多く、春になる度に再発し、秋や冬になるにつれて改善することが多いといわれています。春季カタルの場合には、抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬に加えて、免疫抑制剤と呼ばれる点眼薬を併用することもあります。

コンタクトレンズや眼科手術で使用した糸など、異物に反応する結膜炎として巨大乳頭結膜炎があります。アレルギー体質の強い方が、長期使用できるコンタクトを使用していた場合や、コンタクトレンズを装用したまま寝てしまったことをきっかけに起こる場合が多いです。

巨大乳頭結膜炎は、コンタクトレンズの使用を中止することが最も大切な治療となります。コンタクトレンズの使用法に問題があった場合には、当然ながら装用時間や洗浄法の見直しが必要です。また、清潔感の勝る1dayコンタクトへの変更や、コンタクトレンズの材質を変えてみるなどの工夫も有効な場合があります。そういった対策をしても症状を繰り返してしまう場合は、アレルギーが辛い時期のコンタクト使用は控え、メガネ装用で我慢していただくことも大切です。コンタクト装用をしている場合、違和感を放置せず、重症化する前に相談していただければと思います。

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