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ドライアイ

目次

  1. ドライアイについて
  2. ドライアイ治療について

ドライアイについて

パソコンやスマートフォンによる作業(VDT作業:Visual Display Terminals)が増えている現在において、ドライアイは多くの方々が抱える悩みの1つです。ドライアイは目が乾くだけ。そう考えている人は注意が必要かもしれません。

涙はどこで作られる?

涙は上まぶたの外側にある涙腺と呼ばれるところで作られています。毎分約1.0μLの涙が作られており、目の表面を潤した後、約10%は蒸発し、役目を終えた涙は涙点と呼ばれる涙の排水溝(それぞれの目の内側に上下に1箇所ずつ存在します)から、涙道を通って鼻へと流れていきます。

眼表面に存在できる涙の量は約7μLといわれ、およそ5-6分で新たな涙に入れ変わっています。また、1分間に約20-30回まばたきをすることで、車のワイパーのように目の表面へ涙を均等に行き届けているのです。

涙の働きとドライアイ症状

ドライアイは目がゴロゴロする、目が痛い、目が疲れるなど、様々な症状の原因になります。潤滑油としての涙の働きが不十分になると、まばたきによる機械的な刺激が増えて充血のきっかけとなったり、角膜(黒目)に細かい傷(点状表層角膜炎)がたくさんできてしまうことで、角膜のバリア機能が低下し、細菌感染を起こすきっかけにもなります。涙は目の表面を潤すことで、ゴミや異物を洗い流すだけでなく、バイ菌の侵入や感染を防ぎ、角膜へ酸素や栄養を届ける大切な役目も担っているのです。

ドライアイがある方の中には、メヤニ(眼脂)が増える方もいらっしゃいます。乾燥による痛み刺激で一時的に涙が増えると、涙の中のムチンという成分が白いメヤニとなるためです。こういったメヤニを改善するためには、ドライアイ治療によって涙の質を改善し、安定性を良くしていくことが必要です。

また、涙は視機能にも大きな影響を及ぼします。角膜表面に安定した涙の層を作ることで、目が網膜で鮮明な像を結べるように手助けをしているからです。ドライアイによって涙の層が不安定になったり、角膜表面に傷があることで、光の屈折がうまくいかなくなると、霞んで見えたり、眩しさを感じる原因となります。

このように、ドライアイはゴロゴロするといった自覚症状だけではなく、角膜の傷や角膜感染症、さらには視機能にまで悪い影響を及ぼします。涙は目を守ってくれる大切な物質であり、適切な量が必要なだけでなく、安定した質の良い涙が必要なのです。

安定した質のよい涙とは?

安定した質のよい涙とはどういった状態なのか。これを理解するには涙の層構造を知っておく必要があります。

涙の膜は約7/1000mm程度の薄い膜です。その98%は液層(水/ムチン層)でできており、油層と膜型ムチンに挟まれるような構造で存在しています。

油層は涙の上に油を張ることで、涙の蒸発を防ぐ役割をしています。また、膜型ムチンと呼ばれるタンパク質は、涙を目の表面に接着させる糊のような働きをすることで涙を安定させる役割があります。

このように、涙は水分、油、ムチンがあることでしっかりと機能し、我々の目を守っています。このうちのどれが欠けてもドライアイ症状に繋がります。同じドライアイであっても、患者さんの目がどういった理由で乾いているのかを把握し、それぞれにあった治療を行うことが大切です。

ドライアイ治療について

ドライアイは大きく2つに分かれます。涙の量そのものが少ない涙液減少型と、涙の量はそこそこあるにも関わらず、涙の質が悪いことが原因で不安定となっている蒸発亢進型です。これらはフルオレセインという蛍光色素を用いて涙を色付けすることで鑑別がしやすくなります。

目の中にある涙の量は涙液メニスカス高(TMH : Tear Meniscus Height)から、角膜表面の涙液層が破壊されるまでの蒸発時間は、涙液膜破壊時間(BUT : tear film Break Up Time)から診断することが可能です。

蒸発亢進型ドライアイ

涙の量はそこそこあるにも関わらず、蒸発が早いタイプ(short BUT)の場合には、ただ目を潤すだけではなく、適切な点眼薬でムチンや油を増やしていくことで、涙の質自体を改善していく必要があります。

多くの市販薬は目を一時的に潤すだけであり、こういった質の改善を促すことはできません。潤す効果も数分程度と言われており、市販薬を使用しただけでは症状が改善しない方も多いです。それに対して眼科で処方する点眼薬は、涙の質の改善を目標としています。そのため、乾いたから点眼しようという軽い気持ちではなく、治療薬だと思ってしっかり続けていただくことで、涙の安定性が徐々に良くなり、自覚症状の軽減に繋がっていくと考えられています。

また、油の改善もドライアイ治療には重要です。睫毛の根本にはマイボーム腺という油を分泌する部分があります。ここが詰まってしまうとマイボーム腺機能不全(MGD)と呼ばれる状態になり、油の機能が低下することで涙の蒸発が亢進してしまうからです。

普段から睫毛を清潔に保つこと(眼瞼清拭)や、ホットタオルなどで目をあたため油の流れをよくしておくこと(温庵法)は、ドライアイ予防や改善に有効です。温庵法は38℃程度で5分ほど、朝と夜にあたためると効果的と言われています。そういった対策をしていても油の詰まりが改善しない場合は、マイボーム腺を圧迫することで詰まった油を押し出す処置を行うこともあります。

最近ではまつげダニとマイボーム腺関連疾患との関連も指摘されています。まつげダニは点眼や内服薬による治療が難しく、眼瞼清拭や温庵法、マイボーム腺圧迫などを繰り返し、地道に治療を続けることが必要です。

このように、ドライアイとひと言でいってもたくさんの鑑別と治療の選択肢があります。中にはシェーグレン症候群のように全身性の疾患が絡んでいることもあります。ただ、目が乾くだけ。そう思い込んで放置してしまうと、思わぬ形で重症化してしまうことさえあるので注意が必要です。

涙液減少型ドライアイ

涙の量が少ない涙液減少型では、涙の量を増やしてあげる治療が必要です。

軽症の場合には、蒸発亢進型ドライアイのところで述べた点眼治療や温庵法などによって症状改善がみられる場合もありますが、重症な場合は涙点プラグといった処置が必要になることもあります。

涙点プラグは、涙の排水溝である涙点と呼ばれる場所に栓をすることで、目の中の涙液量を保つ方法です。涙点はそれぞれの目に対して上下に1つずつあり、両目で4箇所存在します。重症度によって涙点に栓をすることで涙の量を調整できますが、過剰に治療してしまうと涙液過多となり、逆に涙が溢れてしまう(流涙)原因となるため、しっかりと見極めて治療を行うことが大切です。

生活環境の改善

スマートフォンやパソコンを見続けることで、まばたきの回数が普段の1/3に減ってしまうことがわかっています。長時間の作業を避けるのはもちろんですが、今の時代では難しいことも事実です。作業中に少しでもまばたきを意識していただくことや、部屋を乾燥させない工夫をすることがドライアイの改善に繋がります。

コンタクトを使用している場合は特に注意が必要です。コンタクトは黒目(角膜)の上に直接のっているわけではなく、角膜とコンタクトの間に涙が潤滑油として存在することで目を保護しています。通常、潤滑油として働く涙は、まばたきの度に新鮮な涙へと交換されています。ところが、コンタクトレンズが角膜に蓋をしている状態では、まばたきによる涙の交換率が下がってしまうからです。ハードコンタクト装用時では20%、ソフトコンタクト装用時では2-3%にまで交換率が下がってしまうことがわかっており、無理してコンタクトを使い続けてしまうと、大きなトラブルになる危険があります。点眼薬の使用や、保湿性の高いコンタクトを使っていただくなど、目の状態によって主治医と相談しておくと安心です。

点眼薬の使い方

人間の涙は毎分約1.0μL作られており、およそ5-6分で新たな涙に入れ替わります。また、目の表面に存在できる涙の量は約7μLです。点眼瓶からの1滴の量は約40-50μLといわれており、人間の目には点眼薬1滴の量ですら溢れてしまうことがお分かりになるかと思います。

複数の点眼薬を使っている患者様に対して、点眼薬は1回につき1滴で十分であること、5分以上間隔をあけてから次の点眼薬を使用してくださいとお伝えするのはこのためです。

点眼薬の中には、緑内障の薬のように値段が高いものや、副作用が目立つ点眼薬も存在します。適切な量を使っていただくことで、費用を抑えられるだけでなく、副作用の出現も減らせる可能性があります。

処方された点眼薬が、先生に伝えられた期間より早く使い終わってしまう事が多い方は、1滴の量(点眼瓶を押す強さ)や、しっかりと点眼できているか(点眼を外していないか)をもう一度見直してみると良いかもしれません。

5mlの点眼薬を1滴40μl(0.04ml)で使用できれば、合計で125滴の点眼が可能です。そのため、両眼に4回(1日8滴)使用した場合、約2週間(15.6日)は使える計算になります。これはあくまで計算上のお話ですが、明らかに早くなくなってしまう場合には点眼薬の使い方を改善してみましょう。

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