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白内障

目次

  1. 白内障について
  2. 白内障治療について
  3. 白内障術後に生じる白内障

白内障について

人間の目はカメラの構造とよく似ています。白内障はカメラのレンズに相当する水晶体と呼ばれる部分が濁ってしまう事が原因で、それにより光がうまく透過できなくなり、見えにくさが生じてしまう疾患です。

白内障の濁りは点眼薬で改善することはなく、白内障による見え方の低下を改善するためには、白内障手術が必要となります。

白内障の原因

白内障はご年齢を重ねていくことでどなたにも起こるものです。80歳以上ではほぼ100%の方に生じると考えられており、加齢性白内障と呼ばれます。一般的には年齢が高くなるほど濁りは強くなり、見えにくさも徐々に増していくものです。

見えにくさを感じる年齢には個人差がありますが、放射線や紫外線の暴露が多い方、糖尿病やアトピー性皮膚炎などがある方、ぶつけたなどの外傷歴がある方は、他の方と比べると白内障の進行が早いと言われています。また、ぶどう膜炎などの炎症性疾患や、ステロイド加療、硝子体手術なども白内障が早い段階で邪魔をしてくるケースが多いです。

母親の体内で風疹に感染するなどが原因となり、生まれつき白内障になってしまう場合(先天性白内障)もあります。人間の目の成長は8歳頃までといわれており、先天性白内障により目の発達が障害されてしまうため、早急な手術が必要となる白内障の1つです。

白内障の種類と症状

カメラのレンズの役割をする水晶体は、直径9mm、厚さ4mmほどで果物のぶどうのような構造をしています。水晶体の中身は、ぶどうの種にあたる核の部分と、ぶどうの実にあたる皮質と呼ばれる部分に分かれます。また、その周りはぶどうの皮にあたる嚢と呼ばれる膜で覆われており、場所によって前嚢、後嚢と呼ばれます。


同じ白内障であっても、白内障のどの部分が濁っているのか、そしてどの程度濁っているのかによって感じられる症状に差がでてきます。皮質性白内障、核性白内障、後嚢下白内障、前嚢下白内障という白内障の種類によって、霞んで見える、眩しく感じる、二重に見えるといった様々な症状を感じるようになります。

白内障治療について

日常生活に支障がない場合には、希望に応じて点眼薬を使っていただくことで、白内障の加齢による進行を遅らせることが可能です。ただし、点眼薬でできることは水晶体の濁るスピードを遅くするだけであり、濁りを綺麗にして視力を回復させてあげることはできません。そのため、日常生活に不便を感じるようになったタイミングで、手術について相談していただき、白内障手術を受けていただく事が、その人にとって最適な手術時期であると言えます。

白内障手術は、あくまで水晶体の濁りを取ることが目的です。手術を検討する際には、どのような種類の白内障で、どういった濁りがあるのかを把握する必要があるのはもちろんのこと、白内障以外の病気(緑内障や網膜疾患など)が視力低下の原因として隠れていないかどうかを確認しておく必要があります。

白内障手術

白内障手術(超音波水晶体乳化吸引術)は、水晶体の前嚢と呼ばれる袋の部分に丸く穴をあけ、そこから超音波の機械を使って濁った水晶体を砕き吸引を繰り返すことで、水晶体の中身の部分(核や皮質)を綺麗にしていく手術です。水晶体の周りの部分(一部の前嚢と後嚢)は袋の状態で残っており、その袋の中に眼内レンズを置いてくる事で手術は終了となります。

目の中の濁ったレンズが綺麗なレンズに変わることで、光をよく透過するようになり、色が綺麗に見えるだけでなく、視力の改善も期待できます。白内障以外の重篤な疾患がない方であれば、レンズ度数、乱視矯正、多焦点眼内レンズなどを選択することで、ご希望に応じた見え方に近づけることも可能です。

白内障の手術タイミングは、基本的には不便を感じるようになってからで良いのですが、あまり長い間見えにくさを我慢しすぎてしまうと、水晶体の濁りが強くなり、水晶体が硬くなることで、白内障手術の難易度があがってしまうことがあります。見えにくさや不便さを感じ始めた場合は、眼科を受診していただき、適切なタイミングを医師と相談していただくことが大切です。

急がなければならない白内障(急性緑内障発作)

白内障の多くは、見えにくさを感じるようになった頃が手術の良い適応です。ところが、中にはまだよく見える状態であったとしても白内障手術を急いだほうが良い患者様もいらっしゃいます。その理由は、白内障の進行が原因で急性緑内障発作という病気になってしまう事があるからです。

白内障が進行していくにつれて起こる変化は、実は水晶体が濁るだけではありません。濁るだけでなく、水晶体が徐々に膨化する事で、物理的に虹彩(茶目)が上へと押し上げられ、目の排水溝である隅角を閉塞してしまう場合があります。

急性緑内障発作は、目の小さい女性(短眼軸の遠視眼)で、白内障が進行してくる時期に起こりやすいといわれています。目の排水溝が閉塞してしまうことで房水が逃げ場を失い、眼圧が急激に上昇してしまうのです。一般的には10-21mmHgである眼圧が、場合によっては60mmHg以上になることもあり、耐え難い目の奥の痛みや、吐き気の原因となります。また、この状態で放置してしまうと、視神経に急激なダメージを生じてしまい、数日で失明に繋がってしまうこともあり、急性緑内障発作は数多くある目の病気の中でも、極めて緊急性の高い疾患の1つです。

急性緑内障発作を予防する

急性緑内障発作を予防するため、もともと目の中のスペース(前房と呼ばれます)が狭い方は、できるだけ早めの白内障手術が推奨されます。膨化した白内障が隅角を閉塞して緑内障発作を生じる前に、自身の分厚くなった水晶体を薄い人工のレンズ(眼内レンズ)に置き換えることで、目の中のスペースを広くすることができるからです。この場合、白内障による視力低下が進んでいない状態でも白内障手術が推奨されるケースがあります。

自分の白内障が、手術を急いだ方が良いものなのか、それとも自分が見えにくさを感じる頃まで様子をみて大丈夫なものなのかは知っておくと良いでしょう。

急性緑内障発作が起きてしまった場合

非常に残念ながら、急性緑内障発作を起こしてしまう患者様もいます。

急性緑内障発作を起こしてしまった場合、点眼薬や点滴などの治療で閉塞が解除できない場合には、レーザー虹彩切開術(LI:Laser Iridotomy)と呼ばれる治療を行う場合があります。排水溝を閉塞している虹彩(茶目)に穴をあけ、隅角を一時的に広げる応急処置のようなものです。

ただし、あくまで応急処置としての意味合いが強く、レーザー虹彩切開術によって閉塞が解除され、眼圧が正常に戻ったとしても、再び閉塞を起こしてしまう前に早期の白内障手術をすることがオススメです。また、レーザー虹彩切開術によって房水の流れが変わったことで、角膜内皮細胞(角膜を透明に保っている大切な細胞)を傷つける可能性が示唆されており、これも白内障手術が勧められる理由の1つです。

頭痛なのか?眼痛(目の奥の痛み)なのか?

急性緑内障発作は、頭痛との鑑別が難しく、受診する科を間違えてしまうと大切な目の治療が大きく遅れてしまうことがあります。吐き気を催すほどの目の痛みがあることで、頭痛と勘違いされてしまうことがあるからです。まず眼科を受診した方が良いのか、それとも内科(または脳神経外科など)を受診するべきなのかは次の症状が出ているかどうかが1つの基準となります。

目の奥に強い痛みがあり、吐き気を生じていることに加えて、黒目の大きさが左右で異なり(中等度散瞳:痛い方の目の黒目が大きい)、黒目の周りに強い充血(毛様充血)があること。また、痛みだけでなく、白く霞んで見えにくいといった視力低下の訴えがあることです。

こういった症状が揃っていれば、急性緑内障発作が原因である可能性が高く、眼科を最初に受診していただくことが望まれます。逆に言えば、充血や見え方といった目の症状が見当たらず、吐き気を伴う強い頭痛を生じている場合には、眼科よりも先に頭蓋内疾患を否定してあげることが大切です。もちろんこれが全てではなく、症状をしっかりと伝えた上で相談していただく必要がありますが、大切な目を守るために知っておくと役立つことがあるかもしれません。

白内障術後に生じる白内障

白内障の手術後はよく見えていたのに、しばらく経ってからだんだん見えにくくなってきたという患者様がいらっしゃいます。そういった方々に多く見られる状態が後発白内障です。その名の通り、後から出てくる白内障です。

白内障手術は、水晶体の袋(一部の前嚢と後嚢)を残し、そこへ眼内レンズを置いてくる手術です。ところが、時間が経つに連れて残した袋に水晶体の濁りが生じてくることがあります。水晶体の中身が綺麗な眼内レンズに変わっていても、後嚢と呼ばれる袋に濁りが生じ、光の透過を邪魔してしまえば、白内障術後であっても見えにくさの原因になります。

後発白内障の治療は手術ではありません。YAGレーザーと呼ばれる特殊なレーザーで行うことができます。濁っている袋の部分のみをレーザー光線で取り除くことで、見え方を改善することができるのです。日帰りによる治療が可能(5分程度)で、処置後も比較的すぐに視力を取り戻すことができます。白内障手術をしたのに見えにくくなってきたと感じている方は、後発白内障の有無を確認していただくと良いかもしれません。

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